先日、あややのモノマネでブレイクした前田健さんが急遽してしまいました。
その死因として発表されたのが、「虚血性心不全」とのことでした。
しかし、前田健さんは持病として不整脈を抱えていたようです。
不整脈による虚血性心不全ということも考えられます。
多くの方々は、
心臓の栄養血管である冠動脈が詰まったりして心筋梗塞や狭心症による心機能不全を思い起こすかもしれません、
しかし、
なんとなく、報道を拝見している限りでは致死的な不整脈による虚血性心不全によるものなのではないかと想像されます。
なぜなら、不整脈でも死に至るものもあるからです。
また、不整脈で通院もされていたということも明らかなっています。
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そこで、不整脈とは何か?
ですが、
不整脈の反対としては正常な洞調律ということになります。
要は整っていない脈ということになります。
一般のかたはちょっと分かりにくいかもしれませんが、心電図を取ればすぐに不整脈は分かります。
(簡単に鑑別できるものに限る。)
発作が出ないとわからない不整脈は別途の方法で診断します。
例えば、
ホルター心電計などで24時間ずっと日常生活において数日間心電図を付けていて、その波形を記録しておき、病院にて波形を解析して労作性だとか期外収縮などは分かることが多いです。
心臓の刺激伝導系というのは、
洞結節に始まり、上側の心房と心室との間にある房室結節という2つの大きな心臓への電気的な刺激を送る装置というものでしょうか、そういった部位が存在します。
この部分は心筋ですが特殊心筋と呼ばれます。
その後にも心室側に刺激を全体的に伝えなければならないので、
右脚、左脚、プルキンエ繊維とより細分化されています。
心臓の刺激伝導系をまとめると以下のようになります。
- 洞結節
- 結節間路(前下行枝、中下行枝、後下行枝など心房を収縮させる電気刺激)
- 房室結節
- ヒス束
- 右脚・左脚
- プルキンエ繊維
↓
↓
↓
↓
↓
というように正常であれば電気的な刺激が心臓全体に伝わって血液の心拍出量を維持できます。
これらの電気的回路のどこかに以上が出たり、
バッハマン束などという洞結節と房室結節の間になくても良い電気刺激間路などができてしまい不整脈になることもあります。
こういった場合は、
その不要な刺激伝導系を電気的に焼ききるなどで対処が可能となっています。
他にも、
不整脈と言っても多くあって代表的なものとしては以下に挙げるようなものです。
洞不全症候群(Sick sinus syndrome:SSS)
洞房結節がその機能を障害され、
ペースメーカーとして働かなくなった状態のことをこう呼ばれます。
洞房結節の興奮が心房に伝わらない洞房ブロックでも、心電図所見や症状は同じです。
この疾患では房室結節をはじめとした、
他の心筋がペースメーカーの役割を果たすことがありますが、そのリズムは洞房結節がペースメーカーである洞結節の場合よりも遅くて約半分程度の心拍数維持にしかなりません。なので、心臓全体の拍動は徐拍となってしまいす。またこの疾患では例えば、房室結節の興奮が逆行性に心房に伝わるのとほぼ同時に、ヒス束を通じて心筋にも伝わる。このため心房と心筋の有効な協調が行われないず、その結果、分時拍出量(=1回拍出量×心拍数)が減少し、程度が著しければ心原性心不全となります。
この為、心臓の人工的なペースメーカー埋め込みの絶対適応になる場合が多いです。
(ほぼ適応になると思われます。)
房室ブロック(Atrioventricular block:AV block):I度、II度、III度とあります。
- 房室結節あるいはヒス束の上部(右脚と左脚に分岐する前)が機能不全となっている状態はこう呼ばれます。その機能不全の程度により、単に房室間の伝導速度が遅れるだけのI度房室ブロックと言います。
- 洞房結節の興奮が心室に伝わらない状態が間欠的に起こるものをII度房室ブロックと言います。
- 心房と心室が完全に別個に収縮するIII度(完全)房室ブロックに分類されています。
さらにII度房室ブロックは、
Wenckebach(ウェンケバッハ型ブロック)型とMobitzII型(モビッツ2型ブロック)に分類されています。
Wenckebach(ウェンケバッハ型ブロック)型では、
心房の興奮に対する心室の興奮の遅れ(心電図のPQ間隔)が徐々に大きくなっていって、ついには心室の収縮が1拍欠失してしまいます。すなわち一回血液が送られない状態。その次の収縮では房室間の伝導時間は元に戻っており、再び心室の興奮の遅れが徐々に大きくなっていくような病態のものです。
MobitzII型では、
Wenckebach型と違い、突然心室の収縮が欠失してしまう。なのでこわいです。
MobitzII型の高度のもの、III度房室ブロックはペースメーカー埋め込みの適応になってしまいます。
脚(右脚、左脚)ブロックとヘミブロック
His束が右脚と左脚に分枝(分岐)した部分よりも下部で起こる障害のことです。
右脚ブロック、左脚ブロックの他に、左脚が前枝と後枝に分岐したよりも下部で障害されている場合にはヘミブロックと呼ばれます。
これらもやはり、高度の左脚ブロックはペースメーカー埋め込みの適応と成り得ることが多いです。
WPW症候群(Wolf-Parkinson-White syndrome)
房室間に、
His束以外にも伝導速度の速い副伝導路(Kent束:ケント束)が存在している疾患・病態を言います。
Kent束(ケント束)が、
- 左房-左室間にあるものをA型、
- 右房-右室間にあるものをB型、
と言います。
Kent束を通る刺激は、His束を通った刺激よりも速く末梢心筋に到達するため、心室の収縮が部分的に正常よりも早く始まってしまいます。この部分的な早い収縮は心電図上にδ(デルタ)波として波形に現れることが多いです。
また、
Kent束を伝わった刺激が、プルキンエ線維を逆行して再び房室結節に戻ってしまう(リエントリー)と、そこから再びKent束へと刺激が伝わてしまい心室頻拍類似の頻拍となることもあります。
この心室頻拍はときに心室細動へと移行し、突然死の原因となってしまうこともあります。
WPW症候群では、心房粗動や心房細動のような本来致死的ではない頻脈性不整脈でも、洞房結節という律速段階(正常な段階・過程))を経ずに心室へと刺激が伝導してしまう為に、心室頻拍類似の頻拍となり致命的と成り得てしまいます。
この為に、
WPW症候群の治療は、上記もしましたがカテーテルを用いてKent束を電気的に焼灼する(アブレーション)ことになります。
症状から見ると大きく以下のようになります。
- 脈の遅くなる「徐脈」、
- 速くなる「頻脈」、
- 脈が飛ぶ「期外収縮」。
「徐脈」は、
心臓の中で電気がつくられなくなったり、途中でストップしたりするために起こります。徐脈をきたす病態として、洞不全症候群、房室ブロックがあります。
「頻脈」は、
電気が異常に早くつくられるか、異常な電気の通り道ができて電気の空回りが起こるために発生します。頻脈をきたす病態には、心房細動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群などがあります。
「期外収縮」は、
本来、電気の生じる場所以外から早めに刺激が出てくるために起こる現象です。この刺激が心房から出る場合には心房性期外収縮、心室から出る場合は心室性期外収縮と呼ばれます。
と長くなってしまいましたが、
不整脈と言ってもこのように色々な病態があります。
致死的なものからそんなに心配のないものまで…。
また、不整脈を持病として持っていらっしゃる場合は、
その不整脈がどのような病態なのかをしっかりとの自分でも把握して危険なものであれば、
周囲の人にも伝えておくべきなのではないでしょうか。
今回、
前田健さんが虚血性心不全ということでお亡くなりになってしまいましたが、
不整脈が持病としてあり通院していたということです。
それでも、
不整脈は突然人の命を奪ってしまうような病気でもあるという事を再認識しなければならないのではないでしょうか。
心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血も重要です。
しかし、
こういう不整脈も発作時には対処できなくなってしまうくらいのものもあります。
私見ですが、
不整脈による心室細動が起こってしまったのではないでしょうか…。
AEDでも病院にある俗に言うDC(除細動器)でも正常な洞調律に戻れない程の心室細動で、
心室細動ということは、
心臓がある意味痙攣しているような状態なので、血液が送られません。
なので、
心臓の栄養血管である冠動脈にも血液は送られません。
それによって虚血性心不全という診断(死因)になったのではないでしょうか。
何よりも、
前田健さんのご冥福をお祈りします。
最後に心臓の動きと電気的な刺激の伝わり方の模式図です。
By Kalumet - selbst erstellt = 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=438152
これなら、
多くの方が分かりやすいのではないでしょうか。
くれぐれも不整脈の病態をしっかりと把握しておきましょう。
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